本文へ
ナースの現在地診断する

当サイトは広告(PR)を含みます。掲載サービスから報酬を受け取ることがあります。

妊娠・産休・育休

看護師の妊娠中の業務。夜勤・抗がん剤・放射線の配慮と伝え方

更新 2026年10月23日読むのに約6分

妊娠が分かると、夜勤や立ち仕事、抗がん剤や放射線のことが、一度に気になります。法律で決まっていることと、医師の指導を通して配慮を求める道を分けて、業務の調整のしかたを整理します。

夜勤も薬も立ち仕事も、いっぺんに気になっちゃうよね。

配慮を求める道は、2つある

妊娠中の勤務の配慮には、大きく2つの道があります。1つは、労働基準法にもとづく本人の請求です。妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させなければならない(65条3項)と定められています。妊産婦が請求した場合は、時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはならない(66条)とも定められています。「妊産婦」は、妊娠中の女性と、産後1年を経過しない女性のことです(64条の3)。

もう1つは、男女雇用機会均等法の母性健康管理の規定にもとづく、医師等の指導を守れるようにするための措置です。女性労働者が、妊婦健診などで受けた指導事項を守れるように、事業主は、勤務時間の変更や勤務の軽減など必要な措置を講じなければならないと定められています。厚生労働省のパンフレットは「措置を講じなければなりません」と書いており、お願いベースの話ではなく、会社の義務です。

本人の請求(労働基準法)

「請求」が要件です。申し出ないまま、自動で変わることはありません。軽易業務への転換や、時間外・休日・深夜業の制限があります。

医師等の指導にもとづく措置(均等法)

主治医などの指導事項が出発点です。通勤の緩和、休憩の追加、作業の制限、勤務時間の短縮、休業などが、会社の側で検討されます。

どちらを使うかは、困りごとによって変わります。夜勤については、請求の道と、指導事項にもとづく道の書き分けを、妊娠中の夜勤免除の進め方に詳しく書いています。ここでは、業務全体の調整に絞ります。

母健連絡カードは、診察室と職場をつなぐ書類

母健連絡カードは、医師等が指導事項を、会社に的確に伝えるためのカードです。指針で様式が定められていて、医師等による証明書になります。

カードには、症状の欄と、標準の措置の欄、措置が必要な期間の欄があります。症状には、つわり・妊娠悪阻、貧血、めまい・立ちくらみ、腹部緊満感・子宮収縮、腰痛、浮腫、頻尿などが並んでいます。標準の措置は、休業(入院加療・自宅療養)、勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限の3つで、期間は1週間・2週間・4週間・その他から選びます。作業の制限の例として、長時間の立作業、同一姿勢を強制される作業、腰に負担のかかる作業、寒い場所での作業、長時間作業場を離れることのできない作業、ストレスや緊張を多く感じる作業が挙げられています。通勤の緩和や休憩の措置は、「その他の指導事項」の欄に書かれます。

カードには、「指導事項を守るための措置申請書」の欄もあります。女性労働者が自分で記入して、会社に出します。カードの提示がなくても、医師等から指導事項があったと申し出れば、会社は適切な措置をとる必要があるとされています。通勤の緩和と休憩については、医師の具体的な指導が確認できなくても、申出があれば適切な対応が望まれる、と書かれています。

健診ごとに、配慮を見直す流れ
  1. 健診で指導を受ける医師・助産師から
  2. カードを書いてもらう指導事項を記入
  3. 会社に出して申請措置申請書も記入
  4. 勤務を調整する期間は1〜4週間など

指導は、健診のたびに変わることもあるよ。

措置の中身と、賃金・休暇のこと

厚生労働省のパンフレットに挙げられている措置の例は、次のとおりです。

  • 通勤の緩和:時差出勤(始業・終業に30〜60分程度の時間差)、勤務時間の短縮(1日30〜60分程度)、交通手段や経路の変更。自家用車通勤も対象です
  • 休憩:休憩時間の延長、回数の増加、時間帯の変更。法定の休憩に加えて、必要に応じて増やすものです
  • 症状への対応:作業の制限、勤務時間の短縮、休業(入院加療・自宅療養)

勤務時間を短縮したり、休憩や休業で勤務しなかった時間の賃金は、有給か無給かを、法律が決めていません。厚生労働省は、労使で話し合って決めることが望まれるとしています。休業が必要なときに、どの休暇制度を使うかは会社に任されていて、私傷病休暇で対応する場合もあります。ただし、母性健康管理の休業を私傷病休暇とは別に設ける場合に、賞与・退職金・人事考課で不利益に扱うことは禁止されています。

妊娠・出産等を理由とする休業に、一定期間休むと退職になる、という定めをあてはめることは、退職の強要にあたり、不利益取扱いに違反すると、厚生労働省は説明しています。

健診に通う時間は、勤務と別に確保される

妊婦健診や保健指導を受けるために必要な時間を、事業主は確保できるようにしなければなりません。回数の原則は、妊娠23週までは4週間に1回、24週から35週までは2週間に1回、36週から出産までは1週間に1回です。医師・助産師が別の指示をしたときは、その指示によります。週数は、最終月経の第1日目を0日として、最初の1週を0週と数えます。

確保される時間は、受診している時間だけではありません。保健指導を受けている時間、医療機関での待ち時間、往復の時間を合わせて考えます。交替制勤務の看護師には、次の点が助けになります。

  • 通院日を、会社の休日や交替制の非番日に変えさせたり、休日以外の申請を拒否したりすることは、原則としてできません
  • 年次有給休暇を、会社が一方的に通院休暇に当てるよう指示することは、認められません(自分から希望して年休を取ることは妨げられません)
  • 通院休暇を半日で出すのか、時間で出すのかは、会社が決めます。労使で話し合うことが望まれます
  • 診断書や出産予定日証明書の提出を求められることはありますが、母子健康手帳を開示させることは、プライバシー保護の面から好ましくないとされています
勤務表を出す前に、整えておくこと

いまの職場でいちばん関係しそうな措置は、どれだっただろう。

ひとつ決まると、次に聞くことが見えてくるよ。

放射線・抗がん剤・移乗介助は、どう扱われるか

妊娠中の看護師が、特に気にしやすい業務です。まず、はっきり言えることから書きます。労働基準法64条の3は、妊産婦等を、妊娠・出産・哺育等に有害な業務に就かせてはならないと定めています。具体的な業務は女性労働基準規則で決められていて、重量物を取り扱う業務、有害なガスを発散する場所での業務、著しく暑熱・寒冷な場所での業務などが並んでいます。

放射線は、電離放射線障害防止規則に限度があります。妊娠と診断された女性の放射線業務従事者は、診断から出産までの間に、内部被ばくによる実効線量1ミリシーベルト、腹部表面の等価線量2ミリシーベルトを超えないようにすることが、事業者に義務づけられています(6条)。妊娠する可能性のある女性は、もともと3か月につき5ミリシーベルトが限度です(4条2項)。放射線業務従事者として線量計を着けている人は、妊娠が分かった時点で、放射線の管理の担当者に伝えることが出発点になります。

抗がん剤は、女性労働基準規則の業務一覧に名前がありません。一方で、厚生労働省は平成26年の通知で、看護師などが気化した抗がん剤を吸い込む、針刺し、こぼれた薬剤に触れるといったばく露で健康障害を起こすおそれがあるとして、安全キャビネット、閉鎖式接続器具、ガウンや手袋などの着用、作業手順と、ばく露したときの対処の手順を整えるよう求めています。妊娠中の取り扱いの考え方は、日本がん看護学会などの「がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン」(書籍)で扱われています。自分の職場の手順書に、妊娠中の扱いが書かれているかを確かめます。

移乗介助は、女性労働基準規則が定める重量物(満18歳以上は、断続作業で30キロ、継続作業で20キロ以上)の業務に、患者さんを抱える介助が当たるかまでは書かれていません。ただ、母健連絡カードの作業制限の例には、腰に負担のかかる作業として「要介護者を抱える」作業が挙がっています。法律で一律に外れるかどうかより、主治医の指導事項として書いてもらい、カードで会社に伝えるほうが、話が進みやすくなります。

妊娠が分かりました。主治医とも相談のうえ、出産まで抗がん剤の調製と投与の担当から外していただけないか、勤務の調整を相談させてください。

配置換えを相談するときの例

会社が措置を講じないなどの紛争が生じたときは、都道府県労働局に、労働局長による援助や調停を申し出る方法があります。是正指導に応じない場合は、企業名の公表の対象になります。相談先の選び方は、労働相談の窓口の選び方にまとめています。妊娠が分かった時点の流れは妊娠が分かったときの職場への伝え方に、産前産後の休みは産休・育休の全体像に置いています。

今日は、次の健診で何を伝えるか決めるところまでで、じゅうぶんだよ。

よくある質問

妊娠中に放射線を扱う業務は、どこまで許されますか?

電離放射線障害防止規則6条で、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者は、出産までの間に、内部被ばくの実効線量1ミリシーベルト、腹部表面の等価線量2ミリシーベルトを超えないようにすることが、事業者の義務です。妊娠が分かったら、放射線の管理の担当者に伝えます。

母健連絡カードがないと、配慮は受けられませんか?

カードの提示がなくても、医師等から指導事項があったと申し出れば、会社は適切な措置をとる必要があるとされています。通勤の緩和と休憩は、具体的な指導が確認できなくても、申出があれば適切な対応が望まれます。

妊娠中に抗がん剤を扱う業務は、法律で禁止されていますか?

女性労働基準規則の就業制限の一覧に、抗がん剤の名前はありません。厚生労働省の平成26年の通知は、看護師などのばく露を防ぐ対策を求めています。外れたいときは、主治医の指導事項として書いてもらい、師長に配置換えを相談します。

出典・参考(公的な情報)

法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。

つぎに読む

この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。

約3分・会員登録なし診断をはじめる