ハラスメントと相談窓口
看護師のパワハラ相談の手順。記録・証拠の残し方から窓口まで
更新 2026年10月23日読むのに約6分
パワハラかどうか迷うときほど、手順を決めて少しずつ進めたほうが、気持ちが追いつきます。記録の残し方から相談窓口までを、公的な案内の順に並べます。
手順は、いちどに全部やらなくていいよ。
5つの手順の全体像
手順は、①書き留める、②3つの要素と照らす、③社内の窓口へ、④社外の窓口へ、⑤手続の説明を聞く、の順です。順番どおりでなくてもよく、社内の窓口が頼れないと感じるなら、先に社外へ行く人もいます。厚生労働省の案内も、会社で対応してもらえないときや、社外で相談したいときに、社外の窓口を挙げています。
- 書き留める日付と出来事
- 3要素と照らす指針の定義
- 社内の窓口人事労務・信頼できる上司
- 社外の窓口労働局・総合労働相談
- 手続を聞く援助・調停・あっせん
全部やらなくていいよ。いまの位置だけ、見つけよう。
パワハラの防止措置は、2020年6月1日から事業主の義務になり、中小企業にも2022年4月1日から義務化されています。いまは、病院・クリニック・訪問看護ステーションなど、規模を問わず、全ての事業主が対象です。ただし、義務を負うのは事業主です。個人の看護師が「やめて」と言えばやめさせられる、という仕組みではない点は、頭に置いておきます。
手順1・2:書き留めて、3つの要素と照らす
いちばん先は、起きたことを書き留めることです。公的な資料には、被害を受けた側向けの記録の書き方は載っていません。ただ、厚生労働省の事業主向けの資料(カスハラ対策のマニュアルなど)では、事実関係を時系列で整理して報告することや、第三者が検証できる記録を残すことが、事実確認の要になっています。相談の場でも、順を追って話せると、状況が伝わりやすくなります。
- いつ:10月3日 14時ごろ
- どこで:ナースステーション
- 誰が:先輩(立場だけでもよい)
- 何を言われた・されたか:覚えている言葉のまま
- 誰が見ていたか:リーダー、同僚
- そのあとの自分の状態:眠れなかった、出勤が重い
一行でも、日付があれば、あとで助けになるよ。
メモのほかにも、あとから事実を示す材料になるものがあります。どれも、ふだんの仕事や生活の中で残せるものです。
- 日付つきのメモ:その日のうちに書いたものほど、信頼されやすい。手帳やスマートフォンのメモでよい
- メールやメッセージ:強い言葉が文字で届いたときは、消さずに画面ごと保存する
- 勤務表・業務の記録:その日の勤務、担当、残業の記録。出来事の日付と結びつけられる
- 受診の記録:眠れない、食べられないなどで受診したら、日付と受診先を控える
- 居合わせた人の名前:あとで話を聞いてもらえるかどうかは別として、名前を書いておく
録音を考える人もいますが、録音してよいかどうかは状況によって判断が分かれます。録音を考えるときは、先に窓口や弁護士などの専門家に、方法を相談してからにします。録音がなくても、上の材料をそろえれば、相談は十分に始められます。
記録って、疲れた日ほどしんどいよね。
短い一行でも、ちゃんと役に立つからね。
手順2では、指針が示す3つの要素(優越的な関係を背景とした言動、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、就業環境が害されるもの)と、書き留めた出来事を照らします。適正な指導は当たらない一方、長時間の叱責の繰り返しや人格を否定する言動は、当たり得る例として挙がっています。要素と6つの類型の見分け方はハラスメントの種類の記事に任せ、ここでは「どの要素が気になるか」に印をつけるところまでにします。当たるかどうかを決めきれなくても、相談は始められます。
手順3:社内の窓口と、信頼できる人に伝える
事業主は、指針に沿って、相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにすることを求められています。窓口の担当者は、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止などの対応を進める立場です。相談したことや、事実関係の確認に協力したことを理由に、不利益な取扱いをしてはならないという定めも、労働施策総合推進法31条2項にあります。ただし、不利益がないと保証されるものではありません。
小さな職場では、窓口が実質ない、あっても相談しにくい、ということもあるでしょう。窓口を定める義務は事業主にありますが、機能しているかは職場によります。相談先の上司が行為者のときは、その人に最初に伝える必要はなく、人事労務の担当者や、外の窓口を使えます。
先日からの業務上のやり取りで、困っていることがあり、相談させてください。経緯は、日付を書いたメモにまとめています。
社内の窓口や上司に、切り出すときの例
手順4:社外の窓口を使うとき
社外の窓口には、いくつかの種類があります。厚生労働省は、会社で対応してもらえない場合や社外で相談したい場合に、お近くの都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)または総合労働相談コーナーを案内しています。匿名でもよく、プライバシーは守られ、相談は無料、という案内です。
- 雇用環境・均等部(室):ハラスメントの防止措置などの相談と、トラブル解決の援助(助言・指導・調停)を担当。受付は平日8時30分〜17時15分(土日祝日・年末年始を除く)
- 総合労働相談コーナー:全国の労働局や労働基準監督署内などに378か所。解雇、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、労働問題全般が対象。予約不要・無料で、平日の日中に面談か電話で相談できる。開いている時間はコーナーごとに違う(9時〜17時、9時30分〜16時30分など)
どちらに行けばよいか迷うときは、労働問題全般を受ける総合労働相談コーナーから入り、使える手続の説明を受けるのが近道です。電話番号は都道府県ごとに違うので、厚生労働省の一覧か、各労働局のページで確かめます。窓口ごとの違いと選び方は、労働相談の窓口の選び方にまとめています。
なお、夜間や土日に電話できる労働条件相談「ほっとライン」は、残業や賃金など労働基準関係の相談が対象です。パワハラなどのハラスメントについては、専門の窓口を案内するのが基本とされているため、ハラスメントの相談は、上の二つの窓口が入口になります。
電話は緊張するよね。最初の一言だけ、決めておこうか。
「相談したいことがあります」だけで、始められるよ。
手順5:話が進まないとき、手続の違いを知っておく
パワハラ防止措置の義務をめぐる、労働者と事業主の紛争には、労働施策総合推進法の35条から38条が定める手続があります。都道府県労働局長が、助言・指導・勧告をする「援助」(36条)と、紛争調整委員会が間に入る「調停」(37条)です。別に、42条は、措置義務に違反している事業主に厚生労働大臣が勧告をして、従わないときは公表できる、と定めています。
一方、いじめ・嫌がらせをめぐる民事上のトラブルは、個別労働紛争解決制度の、助言・指導やあっせんの対象にもなります。どちらが使えるかは、窓口が案内してくれます。両者は別の枠組みなので、混ぜずに、聞きたいことを窓口で確かめます。
援助・調停
パワハラ防止措置をめぐる紛争が対象。労働局長の助言・指導・勧告と、三人の調停委員による調停の手続。
助言・指導・あっせん
いじめ・嫌がらせなどの個別労働紛争が対象。あっせんは、参加が任意で、あっせん案の受諾も強制されません。
あっせんは、原則として双方が別室で待ち、あっせん委員が個別に調整します。相手が参加しなければ、あっせんは打ち切りになります。どの手続も、会社と話し合うきっかけにはなりますが、解決する保証があるわけではありません。個別の事例を知りたいときは、厚生労働省の「あかるい職場応援団」に、裁判事例のページがあります。読むときは、判決の原ページを開いて確かめてください。
手順が進まないときや、心身がつらいときは、つらいときの窓口にも話せます。いじめの形で悩んでいるなら、いじめかもと思ったときの記事も、整理の助けになります。
ひとつ進められたら、それだけで一歩だよ。進まない日も、ここにいるね。
よくある質問
看護師のパワハラは、録音しておいたほうがよいですか?
録音を考えるなら、まず相談窓口や弁護士などの専門家に、方法を相談してください。録音がなくても、日付つきのメモ、メールやメッセージの保存、勤務表や業務の記録、受診の記録、居合わせた人の名前があれば、相談は始められます。
師長からの厳しい叱責は、パワハラになりますか?
指針は、適正な指導は当たらないとし、長時間の叱責の繰り返しや人格否定は、当たり得る例として挙げています。当たるかどうかは個別に総合判断されるため、自分で決めずに、窓口で状況を話してください。
社内の窓口に相談しても、変わらなかったら?
社外の窓口があります。労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーに相談し、援助や調停、あっせんの説明を聞けます。どれも解決の保証はありませんが、話し合いのきっかけになります。
出典・参考(公的な情報)
- パワーハラスメント防止指針(令和2年厚生労働省告示第5号。2020年告示の原文)(厚生労働省)
- 労働施策総合推進法 第31条・第33条・第35条から第38条・第42条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
- 職場でのトラブル解決の援助を求める方へ(厚生労働省)
- 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
- カスタマーハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)(厚生労働省)
- カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)(厚生労働省)
- リーフレット(カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の義務化)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 労働条件相談「ほっとライン」(厚生労働省)
- 看護現場におけるハラスメント対策(公益社団法人 日本看護協会)
- あかるい職場応援団(ハラスメント対策総合情報サイト)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。