ハラスメントと相談窓口
看護師のいじめかも、と思ったとき。記録のしかたと相談先
更新 2026年10月23日読むのに約6分
いじめかもしれない、と思うだけで、毎日の出勤が重くなります。白黒をつけなくても使える相談先があるので、気持ちの整理のしかたと、記録、窓口を順に見ていきます。
いじめかも、って言葉にするだけで、胸がきゅっとなるよね。
いじめかも、と思うときに、胸の中で起きていること
返事が返ってこない。申し送りの輪に入れてもらえない。ミスだけが大きく取り上げられる。ひとつひとつは小さく見えても、積み重なると、「気のせいかもしれない」「自分が悪いのかもしれない」という気持ちが膨らみます。
そう思い込んでしまうのは、弱いからではありません。繰り返される出来事は、一つずつ見ると説明がつくように見えて、全体では強い負担になることがあります。厚生労働省の労災の認定基準(2023年9月)にも、ハラスメントやいじめのように出来事が繰り返されるものは、繰り返される出来事を一体のものとして評価し、続く状況は心理的負荷が強まるものと評価する、と書かれています。
答えは、朝でもいいよ。今夜は、気持ちを横に置いておこう。
白黒をつける前に、ここでは「いつから相談してよいか」を考えます。答えは、おかしいと思い始めた時点からです。パワハラ防止の指針は、相談窓口に、該当するか微妙な場合でも広く対応するよう求めているので、確信がなくても、入口は開いています。
「いじめ」は法律の言葉ではない。それでも相談できる
「いじめ」は、法律の用語ではありません。相談の場では、パワハラの3つの要素に照らして整理されることが多く、指針の6つの類型の一つ「人間関係からの切り離し」には、集団で無視して孤立させることが例として挙がっています。同僚やグループからの行為でも、集団で抵抗しにくい場合は「優越的な関係」の例に入ります。要素と類型の見分け方はハラスメントの種類の記事にまとめているので、ここでは、線引きを自分一人で引ききらなくてよい、という点だけ押さえます。
看護の職場で「いじめかも」と感じやすい場面には、似た形があります。挨拶や質問に返事がない。申し送りや休憩の輪に入れてもらえない。自分のミスだけが皆の前で取り上げられる。必要な情報が自分にだけ回ってこない。一つずつは「たまたま」に見えても、同じ相手から、同じ形で繰り返されているかを見ると、整理しやすくなります。
その場でできることもあります。返事がないときは、もう一度だけ「〇〇の件、確認させてください」と用件を短く繰り返し、それでも返事がなければ、リーダーなど別の人に確認します。情報が回ってこないときは、「申し送りの内容を、メモで共有してもらえますか」と、仕事の形として頼みます。相手を変えようとするより、仕事が止まらない道を先に作るほうが、自分を守れます。
気持ちが追いつかないときは、ここで読むのをやめて、ひと息入れていいよ。
記録は、相談のための小さな準備
記録は、相手を追い詰めるためのものではなく、窓口で状況を順に話すための準備です。公的な資料には、被害を受けた側向けの書き方は載っていません。厚生労働省の事業主向けの資料では、事実関係を時系列で整理することが、事実確認の基本になっています。それにならって、いつ・どこで・誰が・何を言ったか・誰が見ていたかを、書き留めておく、という考え方です。
- いつから続いている:先月ごろから
- いちばん困っていること:声をかけても返事がない
- そのとき起きたこと:休憩室で、一人だけ会話に入れなかった
- 知ってほしい相手:人事の窓口か、外の窓口
上手に書かなくていいよ。自分に分かる言葉で十分。
毎日、きちんと残そうとすると、記録そのものが負担になります。続けられる量を決めて、思い出せる日だけ書けば足ります。気持ちの動きや、体の状態も、一行添えておくと、あとで自分の状況を話すときに役に立ちます。メモのほかに残せる材料(メッセージの保存、勤務表、受診の記録など)は、パワハラ相談の手順の手順1に並べています。
出来事の記録は、現在地ログにも残せます。書くたびに、気持ちが重くなるときは、数日あけても問題ありません。
どこへ、どう伝えるか。窓口の選び方
相談は、まず社内(人事労務の担当者や信頼できる上司)、難しければ社外(都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)か総合労働相談コーナー)という順が、厚生労働省の案内です。窓口ごとの受付時間や使い方は、労働相談の窓口の選び方にまとめています。
社内に伝える
会社の窓口には、事実関係の確認や、配慮、再発防止の対応が期待されています。職場の中で動いてもらえる分、顔が見える不安もあります。
社外に伝える
労働局などの窓口は、職場の外から相談を聞いてくれます。匿名でも相談でき、プライバシーは守られるという案内です。職場の人の目を気にせず、話せる場所になります。
いじめ・嫌がらせは、個別労働紛争解決制度の対象に含まれ、労働局長の助言・指導や、紛争調整委員会のあっせんが用意されています。ただし、この制度は、労働者と事業主の間の紛争が対象で、労働者同士の紛争は対象外とされています。相手が同僚でも、会社としての対応を含めた相談として聞いてもらえるか、窓口で確かめます。
窓口で話すときは、何が起きているか、それでどんな影響が出ているか、どうなってほしいか、の3つを意識すると、順に伝えられます。相手を罰してほしいところまで、決めておく必要はありません。指針は、事業主が被害者に配慮する措置の例として、関係改善の援助、配置転換、行為者の謝罪、労働条件上の不利益の回復、メンタルヘルス不調への相談対応を挙げています。「顔を合わせる時間を減らしたい」「担当を分けてほしい」といった希望も、話す材料になります。
窓口では、状況を話したあとに、聞いておきたいことがあります。「この状況は、どの制度の相談になりますか」「会社には、どの範囲まで伝わりますか」「いま使える手続には、何がありますか」。この3つを聞けば、次に何をするかが見えます。助言・指導やあっせんの違いも、窓口で説明を受けられます。相談したことや、制度を利用したことを理由にした不利益な取扱いは、法律で禁じられています。ただし、それで不利益が起きないと保証されるわけではないので、不安なときは先に社外の窓口に状況を話しておく方法もあります。
夜や休日に気持ちがつらくなったときは、24時間つながるよりそいホットライン(0120-279-338)で話を聞いてもらえます。職場のハラスメントそのものの相談は、平日の日中に労働局の窓口へ、と分けておくと迷いません。番号と時間は変わることがあるので、公式のページで確かめてください。眠れない・食べられない日が続くときは、つらいときの窓口も使えます。相手との距離の取り方は、いじめが起きやすい構造の記事で考えられます。
メモを一行書けたら、今日はそれで十分だよ。
今夜は、あたたかくして、早めに横になろうね。
よくある質問
看護師のいじめは、パワハラとは違うのですか?
いじめは法律の言葉ではなく、判断の物差しはパワハラの3つの要素です。いじめが全てパワハラとは言えず、いじめと呼ばれなくても、要素を満たせばパワハラです。当たるかは、窓口で整理します。
いじめの相手が同僚でも、相談できますか?
相談できます。同僚の言動でも、知識や経験の差や集団での行為によっては、優越的な関係を背景とした言動の例に入ります。個別労働紛争解決制度は労働者同士の紛争が対象外なので、会社の対応を含めて相談できるか、窓口で確かめてください。
いじめを受けているとき、仕事を休んでもよいですか?
眠れない、食べられない、出勤前に体が動かない日が続くなら、休むことと受診を先に考えてください。当日に休むときは、体調不良であることと、出勤できないことを短く伝えれば足ります(伝え方は[当日に休む連絡の文例](/toujitsu-yasumu/))。有給にするか欠勤になるかは、就業規則と勤怠の担当で確かめます。
出典・参考(公的な情報)
- パワーハラスメント防止指針(令和2年厚生労働省告示第5号。2020年告示の原文)(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
- 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準について(基発0901第2号、令和5年9月1日)(厚生労働省)
- カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 電話相談窓口(まもろうよ こころ)(厚生労働省)
- 看護現場におけるハラスメント対策(公益社団法人 日本看護協会)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
つぎに読む
この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。