辞めたい・理由別
看護師が給料で辞めたいとき。明細・平均・規程で確かめる順番
更新 2026年10月23日読むのに約6分
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給料が理由の「辞めたい」は、額が低いのか、仕事に見合わないのか、見えていない条件があるのかで、次の一手が変わります。この記事では、明細、平均の数字、規程、動いたあとの見通しの順に、確かめる順番を整理します。
お給料の話って、聞きにくいし、比べにくいよね。
「給料が低い」の中身を、明細の項目に分ける
給料が理由で辞めたいとき、「低い」と感じる中身は、人によって違います。基本給の額なのか、手当が少ないのか、夜勤や残業の分が思ったほど反映されていないのか、他の職場や同年代と比べて差があるのか、それとも仕事の量や中身に見合わないと感じるのか。ここが分かれていないと、動いたあとに同じ不満が残ることがあります。
最初にすることは、給与明細を一枚、手元に置いて、項目ごとに眺めることです。名前は職場によって違いますが、次の四つに分けると見やすくなります。
- 基本給:毎月の土台になる額
- 各種手当:夜勤、役職、資格、住宅、通勤など。名称も有無も職場で違う
- 時間外・深夜の割増:残業や深夜勤務に応じて付く分
- 控除:社会保険料や税など。総支給額と手取りの差になる
総支給額で見るか、手取りで見るかも、そろえておきます。他の職場の数字と比べるときに、片方が税込、片方が手取りだと、差がずれて見えます。
夜勤の手当は、特に見えにくい項目です。労働基準法37条は、午後10時から午前5時までの深夜に労働させた場合、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払うと定めています。日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」(有効回収3,502病院。設問ごとに回答数は違い、離職率の設問は3,440病院)では、平日の夜勤手当について、深夜の割増賃金を含む定額の夜勤手当を支給している病院が52.0%、割増賃金とは別に定額の夜勤手当を支給している病院が31.2%、割増賃金のみで夜勤手当はない病院が4.5%でした。
定額の夜勤手当がある病院の、1回あたりの平均額は、二交代制の夜勤が11,470円、三交代制の準夜勤が4,300円、深夜勤が5,211円でした。回答した病院の平均で、病院によって幅があります。自分の明細の夜勤手当が、割増を含んだ額なのか、別の定額なのかは、給与の担当や就業規則で確かめます。
平均って、並べてみると、物差しがばらばらなんだね。
平均の数字は、物差しの違いを知ってから見る
看護師の給料の平均は、いくつかの調査に出てきます。ただ、調査ごとに対象と定義が違うため、数字をそのまま並べて「どれが正しい」とは比べられません。代表的な三つを、対象つきで見ます。
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」:民営の10人以上の事業所の、一般労働者の看護師。令和7年6月分の「きまって支給する現金給与額」の平均は36万5,900円、うち所定内給与額は33万3,200円。差の約3万2,700円は、時間外・深夜勤務・休日出勤・宿日直・交替の各手当にあたる超過労働給与額。年間賞与その他特別給与額は、令和6年1年間で85万6,400円
- 人事院「令和7年職種別民間給与実態調査」:民間事業所のうち、事業所規模50人以上かつ企業規模100人以上の統計表の数値で、令和7年4月分。看護師の「きまって支給する給与」は37万9,708円で、夜勤手当・通勤手当を含み、うち時間外手当は4万1,903円
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」:勤続10年・31〜32歳・非管理職の看護師の税込給与総額の平均は34万278円。病院の看護部長の回答を病院ごとに集計した平均で(回答した病院の集計で、全国の病院の代表値ではない)、夜勤は三交代で8回(二交代で4回)を想定し、時間外手当は含まない
平均の見方にも注意があります。同じ賃金構造基本統計調査で所定内給与額の分布を見ると、中位数は32万1,500円で、平均の33万3,200円より低く、下から4分の1の位置が27万8,800円、上から4分の1の位置が37万6,700円でした(令和7年6月分、企業規模計)。幅が広いので、平均より高いか低いかだけでは、辞める理由として弱くなります。分布の読み方や昇給の仕組みは、給料が安いと感じたときの確かめ方に詳しくまとめています。この記事では、辞めるかどうかを決める材料に絞ります。
賞与・昇給・手当は、規程に書かれた条件を読む
賞与や昇給は、規程で決まる部分が大きい項目です。労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と届出を求めています。賃金の決定・計算・支払の方法や、昇給に関する事項は、欠かせない記載事項です。一方で、条文を確認した範囲では、賞与を支払う義務そのものを定めた規定は見当たりません。賞与の有無、額、支給日に在籍している条件などは、就業規則・賃金規程・雇用契約で決まります。有効かどうかの判断は個別になるため、ここでは書きません。
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」の病院調査(全国8,079病院の看護部長に依頼し、回収3,471件。回収率43.0%)では、年齢や勤続年数に基づく昇給が「ある」病院が75.0%、非管理職への人事評価に基づく昇給が「ある」病院が43.4%でした。看護職員の賃金表が「ある」病院は75.0%で、そのうち「公開している」が54.0%です。回答した病院の集計で、全国の病院の割合ではありません。昇給が評価次第か、勤続次第かは、病院で分かれます。
同じ調査の個人調査(日本看護協会の会員から無作為に抽出し、看護の仕事をしている5,575人を集計)では、病院勤務者で、賃金額に「満足」と答えた人が11.8%、「不満」が64.2%でした。不満の多かった項目は、業務量56.2%、業務内容51.8%、他業種も含めた同年代・同性の平均的給与との比較50.4%です。会員の回答の割合で、看護師全体の数字ではありません。日本看護協会の提案資料(2021年3月)が引用する2019年の調査では、病院勤務の非管理職で離職を考えている人が、働き続ける条件として挙げたのは、「仕事に見合った賃金額である」が43.9%で最多でした。この数字は、2019年の調査に答えた人の割合で、いまの全国の看護職の割合ではありません。賃金額の高さだけでなく、仕事に見合っているかどうかも、条件に挙がっています。
辞める・残って交渉する・比べて動くの分かれ目
明細と規程を読み終えたら、給料の不満がどの型かを決めます。型によって、辞めることが近道になる場合と、遠回りになる場合があります。
| 不満の型 | 見分けるサイン | 先に打つ手 |
|---|---|---|
| 計算が合っていない | 夜勤や残業の時間に対して、割増が少なく見える | 勤務の記録と明細を並べ、給与の担当に聞く |
| 規程どおりだが低い | 昇給の表や基準が規程にあり、そのとおりに払われている | 評価の基準を確かめ、上がる道筋があるかを聞く |
| 仕事に見合わない | 額より、量や責任の重さとの差がつらい | 業務量を減らせるかを先に相談する |
| 上がる見込みがない | 昇給の定めがない、または何年も変わっていない | 求人の内訳を同じ形でそろえて比べる |
型は重なることがあります。いちばん強いものから手をつけます。
どの型かで、辞めるのが近道かどうかが変わるよ。
計算が合っていない型は、辞める前に確かめる価値が大きい型です。未払いがあれば、辞めたあとでも請求の対象になりえますが、記録は在職中のほうがそろえやすいからです。仕事に見合わない型は、給料より業務量の問題であることが多く、同じ額で量が減れば不満が軽くなることもあります。上がる見込みがない型は、残っても状況が変わりにくいため、外の条件を比べる段階に進みます。
外と比べるときは、平均の数字ではなく、個別の求人の条件で見通しを持ちます。転職前後の収入の変化は、夜勤の回数や手当の構成で大きく変わるため、求人の内訳を同じ形に直して見比べます。
- 基本給と手当の内訳:総額が同じでも、手当の割合が高いと、勤務の条件に左右される
- 夜勤の回数と手当:総額が夜勤を前提にしていないかを、勤務の例と合わせて見る
- 賞与と昇給:定めの有無と、支給の条件。実績は、聞ける範囲で聞く
- 通勤手当や住宅手当:手取りに近い形で、差を見る
- 勤務時間と休日:総額が上がっても、働く時間が増えれば、時給は同じこともある
- 明細の項目と夜勤手当の中身
- 規程の昇給・賞与の条
- 上司や人事に聞ける範囲
- 求人票と条件書面の内訳
- 夜勤の回数と手当の関係
- 賞与・昇給の定めと条件
今の職場で確かめられることから、先にやってみよう。
賃金の計算に疑問が残るときは、相談先があります。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、都道府県労働局や労働基準監督署内などにあり、予約不要・無料で、平日の日中に相談できます。夜間や休日は、労働条件相談の「ほっとライン」(0120-811-610、平日17〜22時・土日祝9〜21時、12月29日〜1月3日は休止)が使えます。窓口ごとの違いは労働相談の窓口の選び方にまとめています。
給料の話し合いそのものは、給料の交渉にまとめています。転職先の条件の見方は、転職で後悔しないための条件の優先順位と入職前に確かめておきたいことが参考になります。給料よりも、夜勤の負担が重いときは夜勤が理由で辞めたいときへ、理由が混ざっているときは辞めたい理由の整理へ進めます。
明細と規程を並べたら、どの型か、もう見えてきたかな。
よくある質問
給料が低いと感じるのは、平均と比べて低いからですか?
平均と比べるだけでは決められません。調査ごとに対象と含まれる手当が違い、分布の幅も広いからです。まず自分の明細の項目を分けて、何が低いと感じるのかを確かめてください。
夜勤手当が割増賃金に含まれているか、どこで分かりますか?
就業規則や賃金規程の、夜勤手当と割増賃金の条で確かめられます。分からないときは、給与の担当に聞いてください。計算に疑問が残る場合は、総合労働相談コーナーに相談できます。
給料が理由の転職で、収入は上がりますか?
夜勤の回数と手当の構成で大きく変わります。たとえば二交代の夜勤手当は平均11,470円(2025年 病院看護実態調査)なので、月4回の夜勤がなくなれば、手当だけで月4万円台の差が出る目安になります。求人の基本給と手当の内訳、夜勤の回数、賞与や昇給の定めを同じ形にそろえて見比べてください。
出典・参考(公的な情報)
- 労働基準法 第37条・第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(厚生労働省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 (職種)第1表(e-Stat)(厚生労働省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 (職種)第17表 所定内給与額階級別(e-Stat)(厚生労働省)
- 民間給与の実態(令和7年職種別民間給与実態調査の結果)(人事院)
- 2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書(公益社団法人 日本看護協会)
- 2025年 病院看護実態調査 報告書(調査研究報告 No.102)(公益社団法人 日本看護協会)
- 就業継続が可能な看護職の働き方の提案(2021年3月)(公益社団法人 日本看護協会)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 労働条件相談「ほっとライン」(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。