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シフト・残業

看護師のサービス残業とは?始業前の情報収集は労働時間か

更新 2026年10月23日読むのに約7分

サービス残業とは、働いているのに、賃金が払われない時間のことです。この記事では、始業前の情報収集や準備が労働時間になるかを、厚生労働省のガイドラインの考え方で整理します。

ふと思ったんだけど、始業前にカルテを見てる時間って、勤務なのかな。

その疑問、整理する物差しがちゃんとあるんだよ。

「サービス残業」という言葉が指すもの

サービス残業は、法律の中に出てくる言葉ではなく、通称です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、残業しているのに割増賃金が支払われないケースを賃金不払残業(いわゆるサービス残業)として、労働基準法違反になると説明しています。

ここで要になるのは、「その時間が労働時間かどうか」です。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を、使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる、としています。

「明示」は、言葉や文書ではっきり出された指示です。「黙示」は、口に出された指示がなくても、実態として指示があったと見られる場合を指します。「自分が勝手に早く来てやっている」のか、「求められている」のか。その境目を実態から見ていくのが、この記事の中心です。

始業前の情報収集は、どこから労働時間になるか

ガイドラインは、労働時間として扱わなければならない時間の例を3つ挙げています。始業前の準備を考えるときの、手がかりになります。

  • ア:使用者の指示で命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた服装への着替えなど)や、業務終了後の後始末(清掃など)を、事業場内で行った時間
  • イ:指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間)
  • ウ:参加が業務上義務づけられている研修や教育訓練の受講、使用者の指示により業務に必要な学習などを行った時間

始業前の電子カルテの閲覧や、受け持ちの情報の確認は、このうち「準備行為」(ア)か「業務に必要な学習」(ウ)に近いと考えられる場面があります。ただし、看護の始業前の情報収集をそのまま扱った通達は、確認できた範囲では見つかっていません。公的な枠組みは、実態で見ていく、というところまでです。

実態で見るときの、見立ての流れ
  1. 指示はあるか言われた・決まりがある
  2. しないと困るか業務への支障・不利益
  3. 何をしたか場所と業務の内容
  4. 記録する日付と開始・終了
  5. 窓口で確かめる労働局などへ

判断は窓口に任せて、ここでは材料を集めておこう。

迷ったら、「言われたか」「やらないと困るか」の2つをメモしてみて。

看護の場面に、当てはめてみる

始業前の情報収集:リーダーから「早めに来て情報を取っておいて」と言われている、あるいは、取っておかないと受け持ちの仕事に実際に支障が出る、という状況なら、指示(明示または黙示)があったと見る材料になります。誰からも求められず、自分の安心のために見ている場合は、別の見方になることがあります。

申し送り前後の準備や、業務のあとの片づけ:指示により行う業務に必要な準備と後始末は、ガイドラインのアに挙げられている類型です。記録を終えないと帰れない状況の扱いは、残業が多いときの記録と伝え方で続けます。

着替え:ガイドラインが挙げているのは、着用を義務付けられた所定の服装への着替えです。ナース服への着替えがこれに当たるかは、服装の義務づけがあるかなどの実態で変わるので、職場ごとに確かめます。

研修や勉強会:参加が業務上義務づけられていれば、ウに当たります。厚生労働省の訪問介護事業向けの文書にも、研修を受けないことに不利益な取扱いがあるなど、実質的に出席の強制があると認められる場合は、明示的な指示がなくても労働時間にあたる、という考え方が載っています(看護に直接の文書ではなく、考え方の参考です)。勉強会の扱いは、勉強会と労働時間の考え方でも触れます。

なお、所定労働時間外の研鑽を、診療等の本来業務と直接の関連性がなく、上司の指示によらずに行う限り労働時間に当たらないとする通達は、医師を対象にしたものです。看護師には、そのまま当てはまりません。

場面別:材料になること・確かめたいこと
場面材料になる例確かめたい例
始業前の情報収集リーダーから早く来るよう言われている自分の判断で早く来ている
着替え制服の着用が義務づけられている義務づけの有無がはっきりしない
研修・勉強会出席が必須で、欠席に不利益がある自由参加で、不利益がない
記録の持ち越し勤務内に終わらない量を指示されている終わらせ方を指示されていない

判断は実態によります。職場の窓口か、労働局などで確かめてください。

表のどれにも当てはまらなくても、記録は残しておいていいよ。

記録を残して、窓口に相談する

賃金不払残業について相談するとき、厚生労働省は、労働契約書、出退勤の時間、残業時間の記録、給与明細などを持参すると話が進みやすいと案内しています。自分用の記録は、日付、始めた時刻、終えた時刻、何をしたか、誰の指示か、の5つで残します。ノートでも、スマホのメモでも続けられます。

勤務先は、始業・終業の時刻を、原則として使用者が自分で確認するか、タイムカードやICカードなど客観的な記録で確認する、とガイドラインは定めています。自己申告制の場合でも、申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、適正な申告を妨げる措置はしてはならないとされています。「記録上は残業ゼロ」に合わせるよう言われたときは、そのやりとりも日付つきで残します。

未払いの賃金を請求できる期間(時効)は、当分の間、退職手当を除く賃金で3年とされています(労働基準法115条・附則143条)。割増の率(時間外25%以上、深夜25%以上など)は、年末年始の記事の割増賃金の早見表で確かめられます。

相談先は、都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナー(無料・予約不要。土日祝日と12月29日〜1月3日は閉庁)です。夜や休日に相談したいときは、労働条件相談ほっとライン(0120-811-610、平日17〜22時・土日祝9〜21時、12月29日〜1月3日は休止)があります。受付時間と番号は変わることがあるので、公式ページで確かめてください。窓口の使い分けは、労働相談の窓口の選び方にまとめています。

職場に直接たずねる場合は、責める形ではなく、確認の形にすると話が進みます。「始業前に確認している時間は、勤務として扱われるのか」という問いなら、答えが決まりとして返ってきやすくなります。返事は、口頭だけでなく、日付と一緒にメモしておきます。

始業前に受け持ちの情報を確認している時間は、勤務時間として扱われるのかを、教えていただけますか。

職場への確認の一言
相談の前に、3つそろえてみる

ひとつ見立てが立てば、今日はそれで十分。続きは、また今度でいいからね。

よくある質問

新卒でも、始業前の情報収集の考え方は同じですか?

労働時間かどうかの見方は、経験年数で変わりません。実態で見る点も同じです。先輩に聞きにくいときは、いつ・何をしたかを記録して、窓口で相談する方法があります。

残業を申請しなかった場合は、労働時間にならないのですか?

申請の有無だけでは決まりません。ガイドラインは、労働時間かどうかを、その行為が使用者から義務づけられ、又は余儀なくされていた等の状況から個別具体的に判断するとしています。自己申告制の職場には、申告と実際の時間がずれていないか実態を調べて補正すること、申告できる残業時間に上限を設けて適正な申告を妨げないことも求めています。申請しなかった時間も、日付と開始・終了を記録しておきます。

過去の分も請求できますか?

賃金の請求権の時効は、当分の間、退職手当を除く賃金で3年とされています。それより前の分は、時効のため請求が難しくなります。手続きや見通しは、窓口で聞いてください。

出典・参考(公的な情報)

法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。

つぎに読む

この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。

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