退職後のお金
看護師が退職するとき、ボーナスはもらえる?支給日在籍と確かめ方
更新 2026年10月23日読むのに約6分
辞める前後のボーナスは、噂話と実際の決まりが食い違いやすい話題です。この記事では、もらえるかどうかを左右する支給日在籍の条件と、退職日との並べ方、規程を書面で確かめる順番を整理します。
辞める前のボーナス、どうなるのか気になるよね。
確かめる順番を、いっしょに書き出していこう。
ボーナスが出るかは、勤め先の規程で決まる
退職を考え始めると、「ボーナスをもらってから辞めたほうがいい」「辞めるならボーナスは出ない」といった話を耳にすることがあります。どちらも、一部の職場には当てはまる話ですが、どの職場にも通じる決まりではありません。
労働基準法11条は、賃金を、賃金・給料・手当・賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定めています。賞与も賃金の一つです。一方、24条2項は、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うという原則について、臨時に支払われる賃金や賞与などで厚生労働省令で定めるものを対象外としています。89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作って届け出ることを求めており、臨時の賃金等は、定めをする場合に書く事項です。
これらの条文は、賞与を支払う義務そのものを定めたものではありません。賞与を出すかどうか、いつ・いくら出すか、「支給日に在籍していること」を条件にするかどうかは、就業規則・賃金規程・労働契約に書かれた、勤め先の決まりで決まります。だから、最初に読むのは、勤め先の規程の「賞与」の条文です。
看護師の賞与の平均額や「何か月分」の読み方は、看護師のボーナスの仕組みにまとめています。参考までに、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、看護師の年間賞与その他特別給与額の平均は85万6,400円でした。平均であって、自分の賞与がこの額になるという意味ではありません。この記事では、辞めるときにもらえるかどうかに絞ります。
支給日在籍の条件。有効とした最高裁の判例がある
賞与の条文によくあるのが、「支給日に在籍している者に支給する」という条件です。この条件があると、算定期間に働いていても、支給日の前に退職した人には賞与が出ない扱いになります。
この条件について、最高裁判所は、大和銀行事件(昭和57年10月7日 第一小法廷判決)で、支給日に在籍する者にだけ賞与を支給するという就業規則の定めに合理性があるとし、支給日の前に退職した人は、その賞与の受給権を持たないと判断しました。厚生労働省の「確かめよう労働条件」も、この判例を紹介しています。この事件では、以前からあった慣行を、労働組合の要請を受けて就業規則に書いた、という経緯も合わせて判断されています。
つまり、規程に支給日在籍の条件がはっきり書かれていて、自分の都合で支給日の前に辞める場合は、賞与は出ないと考えておくのが現実的です。ただし、判例は個別の事件についての判断です。条件の書き方があいまい、支給日がいつもより大きく遅れた、自分で辞める日を選べない事情があった、といった場合は、同じ結論になるとは限りません。迷うときは、規程を持って総合労働相談コーナーに相談できます。
支給日の1日前と1日後で、話がまったく変わることがあるんだね。
だから、退職日と支給日を並べてみるのが先なんだ。
賞与の日を軸に、退職日を決めたくなったとき
ボーナスの支給日の前後で、退職日を決めたくなることがあります。気持ちとしては自然ですが、賞与だけで日を決めると、ほかの確認が抜けやすくなります。
賞与だけで日を決める
支給日在籍の条件があるかどうかが日の手がかりになる反面、申し出の期限、有給休暇の残り、次の職場の入職日、保険の空白が後回しになりやすくなります。
全体を並べて日を決める
賞与の条件、申し出の期限、有給、次の入職日、保険と住民税の手続きを一つの表に並べると、日をずらす意味があるかが見えやすくなります。
申し出の期限と退職日の決め方は退職の時期の決め方、有給休暇の使い方は退職前の有給休暇にまとめています。退職後の保険と年金は退職後の保険・年金・失業保険の期限つき一覧で扱っているので、ここでは繰り返しません。
支給日まで在籍を延ばすなら、そのぶん体調や次の入職日に影響が出ないかも、あわせて見ておきます。次の職場の入職日を支給日より後にずらせるか、ずらすと保険や年金に空白ができないかも、同じ表に書きます。支給日の直後に退職を申し出ることに、気まずさを感じる人もいます。受け取ったあとに退職した場合の扱い(返還の定めがあるかどうか)も、賞与の条文で一緒に確かめておくと、あとで迷いません。
もらえるかを、書面で確かめる順番
確かめる対象は、「賞与の条件」と「自分の条件」の二つに分けると進めやすくなります。賞与の条件は、就業規則と賃金規程の「賞与」の条文を見ます。自分の条件は、入職のときに受け取った雇用契約書や労働条件通知書、過去の賞与の明細で、算定の基準を確かめます。
| 確かめること | 見る書類 | 見て分かること |
|---|---|---|
| 賞与を出すかどうか | 就業規則・賃金規程の賞与の条文 | 支給の有無、支給の時期、決め方 |
| 支給日に在籍が要るか | 同じ条文、または支給の細則 | 退職日と支給日の関係 |
| 算定期間 | 賞与の条文、過去の賞与の通知 | どの期間の勤務が対象か |
| 自分の算定の基準 | 雇用契約書、労働条件通知書、賞与の明細 | 基本給の月数か、評価で変わるか |
| 書いていないとき | 人事・総務への文書での質問 | 規程にない、という答え自体が確認結果 |
書類の名前や置き場所は、職場で違います。条文の読み方で迷うときは、総合労働相談コーナーでも聞けます。
表の左から順に、1つずつ印をつけていこうね。
規程が手元にないときは、人事や総務に、就業規則と賃金規程の閲覧を頼みます。口頭だけで済ませず、メールなど文字に残る形で聞くと、答えが残ります。たとえば「賞与の支給日に在籍している必要があるか、算定期間はいつからいつまでか、退職日で扱いが変わるかを、規程の該当の条文で教えてください」と、質問を三つにまとめます。
答えが曖昧なとき、規程と実際の説明が食い違うと感じるときは、書面ややりとりを手元に残したうえで、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます(平日の日中。無料・予約不要)。賞与の条文を見せてもらえないこと自体も、相談の材料になります。
条文が多いと身構えちゃうけど、見る場所は決まっているんだね。
まずは就業規則の、賞与のところから開いてみよう。
よくある質問
ボーナスの支給日の前に辞めると、1円ももらえませんか?
規程に「支給日に在籍している者に支給する」という条件があれば、支給日前に自分の都合で辞めた人には出ない扱いが多く、最高裁もこの条件を有効とした判例(大和銀行事件、昭和57年)があります。条件がない、書き方があいまいなときは、規程を持って相談窓口で確かめます。
有給休暇を消化している間に支給日が来たら、もらえますか?
有給を使っている期間も、退職日までは在籍しています。支給日在籍の条件があるときは、退職日が支給日より後かどうかで見ます。規程の「在籍」の定め方も、あわせて確かめてください。
就業規則を見せてもらえないときは、どうすればよいですか?
常時10人以上の労働者がいる職場には、就業規則を作成して届け出る義務があります(労働基準法89条)。まず人事や総務に文字で頼み、それでも分からないときは、総合労働相談コーナーに相談できます。
出典・参考(公的な情報)
- 労働基準法 第11条・第24条・第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 賞与(裁判例:大和銀行事件 最一小判 昭和57年10月7日)(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査(職種 第1表:看護師・准看護師の給与と年間賞与)(厚生労働省(e-Stat))
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。