心とからだのケア
看護師が「メンタルが弱いのかも」と思ったとき。しんどさの整理
更新 2026年10月23日読むのに約7分
「メンタルが弱いから、こんなにしんどいのかも」と考え始めると、原因が自分の中にしかないように見えてきます。この記事では、弱い・強いの物差しをいったん外して、しんどさの出どころを4つに分けて整理します。
「弱いのかな」って思う夜が、あるよね。
そう思うくらい、がんばってきたんだと思うよ。
「弱い」「強い」で測ると、見えなくなるもの
しんどさを、強い・弱いで測ると、話が本人の性格だけに集まります。すると、仕事の量や、勤務の組み方、職場の支えといった、環境の側のことが見えにくくなります。
世界保健機関(WHO)は、2019年に、国際疾病分類ICD-11で、燃え尽き症候群(バーンアウト)を、うまく対処されてこなかった慢性的な職場のストレスから生じる症候群と説明しました。特徴として、エネルギーの枯渇感や疲弊感、仕事への心理的な距離の増大や否定的な感情、職業上の有効性の低下の3つを挙げています。WHOはこれを、職業に関連する現象(occupational phenomenon)と呼び、職場の文脈に限った概念で、生活の他の領域の経験には使わない、とも書いています。
この定義が、「職場のストレスが、うまく対処されなかったとき」と、環境の側の要素を含んでいることは大切です。意志の強さだけを測る言葉ではありません。
強い弱いを決める前に、お茶を一杯どうぞ。いま休めているかを、いっしょに見よう。
しんどさの出どころを、4つに分ける
しんどさをひとかたまりのまま抱えると、全部が自分の弱さに見えます。次の4つに分けて、公的な資料が示していることを並べます。
- 仕事の量:厚生労働省の令和7年(2025年)の労働安全衛生調査で、強い不安・悩み・ストレスの内容(主なもの3つまで)は、「仕事の量」が39.5%で、「仕事の失敗、責任の発生等」と並んで最多でした
- 睡眠・夜勤:睡眠ガイド2023は、交替制勤務を、体内時計に逆らって生活せざるを得ない、体に負担のかかる勤務形態と説明しています。日本看護協会の提案は、海外の研究を引いて、夜勤交代制勤務の人は疲労を1.75倍、不眠を2.75倍引き起こしやすいと紹介しています(日本の看護職の数字ではありません)
- 人との関係・サポート:日本看護協会の提案が引く2019年の調査で、暴力・ハラスメントを経験すると離職意向が高まる傾向があり、上司や同僚から日ごろサポートを得られている人は、経験があっても、得られない人より離職意向が低下する傾向がありました。労働安全衛生調査でも、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」は32.9%でした
- 責任・失敗:同じ労働安全衛生調査で、「仕事の失敗、責任の発生等」が39.5%、「仕事の質」が30.7%でした
勤務間インターバルについても、日本看護協会の提案は、海外の研究を引いています。スウェーデンの研究では、勤務と勤務の間が11時間未満の人は、11時間以上の人より、疲労を1.71倍、不眠を2.12倍引き起こしやすいとされています。ノルウェーの看護職の研究では、11時間未満のインターバルがあった翌日に、病気休暇を取りやすいことが分かった、と紹介されています。どちらも海外の研究で、日本の看護師の数字ではありません。自分の勤務表で、勤務と勤務の間が何時間あいているかを、一度数えてみる材料になります。
4つのうち、自分で動かせる欄と、職場に頼むしかない欄を、分けて見る方法もあります。睡眠の欄は自分で整えられても、仕事の量や勤務の組み方は、一人では動かしにくいためです。これらは、看護師全体の強さを測った数字ではありません。労働者全体の調査と、海外の研究と、日本看護協会の病院調査が混ざっています。それでも、しんどさの出どころが、本人の性格の外にも、いくつもあることは分かります。
- 仕事の量:受け持ちが多い日が続いた
- 睡眠・夜勤:夜勤明けは眠れず、昼夜が逆転
- 人との関係:同期に話せる人が1人いる
- 責任・失敗:先週のインシデントが頭に残る
- いまの休めた感じ:10のうち4
書いてみると、重い欄と、そうでない欄が見えてくるよ。
分けてみると、ひとかたまりだったものが、少しずつほどけてくるかもしれないね。
強さではなく、休めているかで見る
睡眠について、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、適正な睡眠時間には個人差があるとしたうえで、成人は6時間以上を目安に確保すること、睡眠の不調や休養感の低下があるときは、生活習慣の見直しとあわせて、病気が潜んでいる可能性にも留意することを挙げています。休めていない状態が続くと、気持ちの強い弱いに関係なく、しんどくなることがあります。
ミスが続くと、自分の力不足や特性を疑いたくなります。まずは、睡眠不足や疲れ、勤務の環境から切り分けて考える方法があります。特性のことが気になるときの、公的な相談先の確かめ方は、大人の発達特性が気になるときの記事にまとめます。
勤め先でストレスチェックが行われているときは、いまの状態を知る材料になります。厚生労働省のQ&Aは、労働者に受検義務はないとしつつ、全員の受検が望ましいとしています。結果は、本人の同意なしに事業者へ提供されません(労働安全衛生法66条の10)。くわしくは、ストレスチェックの記事にあります。
ひとりで抱えない:受診の目安と窓口
こころの情報サイトは、うつ病の案内の中で、気分の落ち込みや日常生活への大きな支障が続く場合は、自己判断せずに、総合病院の精神科、心療内科、精神科クリニック、かかりつけの内科医、保健所・精神保健福祉センターなどに相談するよう勧めています。診断の基準ではなく、相談を考える目安です。「うつかもしれない」と感じたときの整理メモと窓口は、「うつかもしれない」と思ったときの記事にあります。
職場の外では、働く人向けのこころの耳の電話・SNS相談(祝日・振替休日・年末年始は休み)や、地域のこころの健康相談統一ダイヤルが使えます。番号と受付時間は、メンタル相談窓口の一覧にまとめています。夜中にどうしても苦しいときは、#いのちSOS(0120-061-338、24時間・無料)があります。
職場の中にも、相談できる場所があるかもしれません。産業医は、治療を行う主治医とは役割が違い、労働者の健康管理を行う医師です。話すときは、上の4つの欄のメモを持っていくと、「弱いかどうか」ではなく「どこが重いか」から話を始められます。相談した内容がどう扱われるかは、先に確かめてよい点です。
日本看護協会の「看護職の労働安全衛生」のページには、メンタルヘルスに関する厚生労働省の指針や、心の健康問題で休業した労働者の職場復帰支援の手引きなどへのリンクが、まとめられています。職場の取り組みを確かめたいときの入口になります。
今日のしんどさを、一行だけ、紙に残しておこう。
それが済んだら、早めに休もうね。
よくある質問
看護師は、メンタルが強くないと続けられませんか?
続けやすさは、性格の強さだけでなく、環境でも変わります。日本看護協会は、就業継続が可能な働き方の提案で、夜勤・交代制勤務、時間外労働、暴力・ハラスメント、仕事のコントロール、評価と処遇の5つの要因を取り上げています。
「メンタルが弱い」と言われたら、どう受け止めればよいですか?
「メンタルが弱い」は、医学的な診断名ではありません。しんどさの出どころを4つの欄に書き出して、環境の側に、動かせるものがないかを見てみます。
メンタルの不調で、受診する目安はありますか?
気分の落ち込みや日常生活への大きな支障が続く場合は、自己判断せずに相談するよう、こころの情報サイトが案内しています。眠れない・休まらない状態が続き、日中の生活に影響しているときは、睡眠ガイドも医師への相談を勧めています。
出典・参考(公的な情報)
- Burn-out an occupational phenomenon: International Classification of Diseases(世界保健機関(WHO))
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)
- 令和7年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況(厚生労働省)
- 就業継続が可能な看護職の働き方の提案(2021年3月)(公益社団法人 日本看護協会)
- 看護職の労働安全衛生(公益社団法人 日本看護協会)
- ストレスチェック Q&A集(厚生労働省)
- 労働安全衛生法 第13条・第13条の2・第13条の3・第66条の8・第66条の10(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- うつ病(こころの情報サイト)(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 働く人の『こころの耳電話相談』(こころの耳(厚生労働省))
- 電話相談窓口(まもろうよ こころ)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。