副業・掛け持ち
看護師のダブルワークで知っておく、社会保険と税の基本
更新 2026年10月23日読むのに約7分
日勤の病院と、別の日のクリニックなど、2か所で働くダブルワークでは、労働時間の数え方、保険、税金が、1か所のときと変わります。この記事では、どこで何を合算し、何を合算しないかを、公的な資料に沿って整理します。
夜勤明けにもう1か所、と考えると、体が先に心配になるね。
決まりを先に知っておくと、気持ちが少し楽になるよ。
始める前に、勤め先のルールと順番を確かめる
ダブルワークを始める前に、いまの勤め先に副業・兼業のルールがあるかを確かめます。副業の届出は、法律で全員に義務づけられているのではなく、就業規則や労働契約に定める、会社のルールによります。届出制や許可制の職場では、手順を先に聞いておきます。
厚生労働省の副業・兼業のガイドラインは、労働時間以外の時間をどう使うかは、基本的には労働者の自由としています。例外として禁止・制限できるのは、労務の提供に支障がある場合、業務上の秘密が漏れる場合、競業で会社の利益が害される場合、会社の名誉や信用を損なう行為などがある場合です。同業の医療機関を掛け持ちするときは、競業にあたるかが問題になることがあり、個別の判断になります。
公立病院の看護師は、地方公務員法38条の対象になることがあります。営利企業などへの従事に、任命権者の許可が要る定めです。どう適用されるかは職場によるので、人事に確かめてください。
届出をしなかった副業が、すぐに違法や懲戒になるとは限りません。ガイドラインは、形式だけでなく実質を見て、慎重に判断するべきとしています。一方で、無断で始めてよい、という意味でもありません。禁止されているときの考え方は副業が禁止の職場、副業そのものの選び方は看護師の副業で扱っています。
- 勤め先のルール就業規則・届出制の有無
- 伝える・届け出る必要な職場だけ
- 2か所の時間を並べる所定時間と夜勤を書く
- 保険の条件を見る事業所ごとに確かめる
- 年内の収入を見る確定申告の要否
上から順に確かめれば、抜けが減るよ。
労働時間は、2か所を通算して数える
労働基準法38条1項は、事業場が別でも、労働時間に関する規定の適用では、労働時間を通算すると定めています。厚生労働省のガイドラインは、事業主が違う場合も含まれると説明しています。通算の対象は、労働基準法の労働時間の規制が適用される働き方、つまり雇用同士です。副業が業務委託などの場合は、通算されません(フリーランス・業務委託の記事で、実態で判断される点を扱っています)。
通算して見るのは、1日8時間・週40時間の法定労働時間と、時間外・休日労働の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内という上限です。一方で、休憩、休日、年次有給休暇は、通算されず、それぞれの職場で与えます。
通算の順番は、副業を始める前なら、契約の先後の順に所定労働時間を数え、法定労働時間を超える部分は、あとから契約した職場の時間外労働になります。始めたあとは、所定外の労働時間を、働いた順に通算します。割増賃金は、それぞれの使用者が、自分で働かせた時間について、自分の就業規則などで定めた率で払います。看護師は、日勤と夜勤を別の職場で入れることがあり、この通算が現実の問題になりえます。夜勤の深夜割増(午後10時から午前5時は25%以上)は、労働基準法37条の決まりです。
夜勤の回数の記録のつけ方は、夜勤の回数が多いと感じたときの記録と伝え方にまとめています。副業を足すと、休息の時間が削られやすいので、2か所の勤務表を並べて見ておきます。厚生労働省のガイドラインは、副業による過労で健康を害したり、業務に支障が出たりしないよう、労働者が自分で、業務量・時間・健康状態を管理することも求めています。
2か所の勤務表を、同じ紙に並べてみると、見えてくることがあるよ。
書き出すだけでいいから、気軽にやってみて。
保険は事業所ごと、労災は賃金を合わせて見る
健康保険・厚生年金の加入は、事業所ごとに判断されます。2か所とも、単独では加入の条件を満たさないとき、労働時間を合算すれば条件を満たす場合でも、加入にはなりません。どちらか1か所だけが条件を満たす場合は、その事業所で加入の対象になります。両方で条件を満たす場合は、どちらかの事業所を管轄する年金事務所と医療保険者を選び、2か所の報酬月額を合算して標準報酬月額を決めます。保険料は、報酬の額に応じて按分して納めます。
これは令和4年7月版のガイドラインの記載です。1か所ごとの加入条件(2026年10月に賃金要件がなくなり、週の所定時間・見込みの期間・企業規模で見る)は看護師のパートにまとめています。2か所とも週20時間に届かないと、合わせて40時間働いても、どちらでも加入しない点が、掛け持ちならではの落とし穴です。
雇用保険は、同時に複数の事業主に雇われていても、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける職場でだけ、被保険者になるのが現行の考え方です。例外として、65歳以上で複数の事業主に雇われている人は、2か所(それぞれ週5時間以上)の週所定労働時間の合計が20時間以上なら、本人の申出で高年齢被保険者になれます。週10時間以上へ適用が広がるのは2028年10月からで、いまは、週20時間以上で31日以上続く見込みが対象です。最新の運用は、ハローワークで確かめます。
労災保険は、パート・有期の人も対象です。複数の職場で働く人は、災害が起きた職場以外の賃金も合算して給付を算定し、複数の職場での業務の負荷を総合して、労災の認定を行います。職場間の移動中の災害は、通勤災害の対象です。
| 項目 | 2か所の扱い | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 労働時間(法定労働時間・時間外の上限) | 通算する | 勤め先に確かめる |
| 休憩・休日・年次有給休暇 | 通算しない(職場ごと) | 勤め先の就業規則 |
| 健康保険・厚生年金の加入条件 | 事業所ごとに判断。合算では満たさない | 年金事務所 |
| 雇用保険 | 主たる賃金の職場でだけ(65歳以上は例外あり) | ハローワーク |
| 労災保険の給付額 | 別の職場の賃金も合算する | 勤め先に確かめる |
| 所得税(給与が2か所以上) | 年末調整されなかった側の給与などで、申告の要否を見る | 税務署・国税庁 |
令和4年7月版のガイドラインなどに基づく早見表です。最新の運用は、窓口で確かめます。
合算するものと、しないものを分けておくと混乱しないよ。
税金は、確定申告が必要かを20万円で見る
会社員は、年末調整で所得税の納税が済むので、確定申告は不要なことが多いです。国税庁は、給与を2か所以上から受けていて、その全部が源泉徴収の対象になる場合に、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計が20万円を超える人は、確定申告が必要としています。
ただし、給与の収入金額の合計から、所得控除の合計(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を引いた金額が150万円以下で、各種の所得金額が20万円以下なら、申告は不要という例外があります。自分の数字に当てはめる判定は、国税庁のタックスアンサー(No.1900)で確かめます。
20万円の数え方は、2か所目の給与は年末調整されなかった給与の「収入金額」、給与以外の副業の収入は、必要経費を引いたあとの「所得」です。厚生労働省のガイドラインは「副収入」と書いていますが、正確な基準は国税庁の書き方に従います。副業が給与(アルバイト)か、業務委託の報酬かで判定が変わるため、所得の種類は国税庁で確かめます。20万円以下でも、医療費控除や寄附金控除を受けるときは、別に確定申告が必要になる場合があります。
「年収の壁」は、社会保険(軸は週20時間)、被扶養者の認定(原則として年収130万円未満)、税金の3つに分けて考えます。所得税は、給与だけなら令和8年分から年収178万円以下はかかりません(国税庁 No.1800)。掛け持ちでは、2か所の給与を合わせた額で見る点に注意します。3つの壁の違いは扶養内で働く基準、副業の申告の手順は副業の確定申告で扱っています。
SNSやブログでの副業は、SNS・ブログでの副業の注意で扱っています。住民税の細かい手続きは、お住まいの市区町村で確かめてください。
合算するもの・しないものが分かれば、2か所目の話も聞きやすくなるよ。
よくある質問
ダブルワークは、勤め先に言わないといけませんか?
届出は、法律で全員に義務づけられたものではなく、就業規則や労働契約のルールによります。届出制や許可制の職場もあるため、始める前に就業規則を確かめてください。
副業の収入が20万円以下なら、申告は不要ですか?
給与が2か所以上なら、年末調整されなかった給与の収入金額と、ほかの所得の合計で見ます。給与以外の副業は、収入ではなく所得で数えます。医療費控除などを受けるときは、別に申告が必要になる場合もあるため、国税庁のNo.1900で確かめてください。
日勤と夜勤を別の病院でやると、労働時間は合算されますか?
雇用同士なら、労働基準法38条1項により通算されます。法定労働時間や時間外の上限の判断に使われます。休憩・休日・有給休暇は、通算されません。
出典・参考(公的な情報)
- 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月8日改定版)(厚生労働省)
- 副業・兼業(厚生労働省)
- 労働基準法 第9条・第14条・第15条・第37条・第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方公務員法 第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)
- No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか(国税庁)
- 「年収の壁」への対応(厚生労働省)
- パートタイム・有期雇用労働法のあらまし(2026年10月1日改正省令等施行版)(厚生労働省)
- 2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました(日本年金機構)
- 社会保険加入の要件(社会保険適用拡大特設サイト)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。