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看護師の腰痛。予防の点検リストと、続けるのがつらいときの選択肢
更新 2026年10月23日読むのに約6分
腰の痛みは、職場の仕組みと自分の動き方の両方から考えると整理しやすくなります。この記事では、厚生労働省の指針を病棟で確かめる点検リストにして、労災の考え方と、続けるのがつらいときの選択肢まで並べます。
腰って、痛くなってから慌てることが多いよね。
予防の側から、順番に見ていこうか。
予防の指針は、看護師個人ではなく職場に向けて書かれている
厚生労働省は「職場における腰痛予防対策指針」を示しています。腰痛の発生要因には、重い物を扱うといった動作、環境、個人の要因、心理的・社会的な要因があり、一つに絞れない、という考え方です。そのため、体制づくり、作業のやり方、作業環境、健康管理、教育を、総合的に、続けて進めるとされています。
別紙では、腰痛が比較的多い5つの作業(重量物の取扱い、立ち作業、座り作業、福祉・医療分野等における介護・看護作業、車両運転等)ごとの対策を示しています。看護の仕事に関わるのは、介護・看護作業の項目です。
注意したいのは、この指針が、病院や施設などの事業者が講じる対策を示したものだという点です。看護師個人が守らなければ違反、という書き方ではありません。腰が痛いのは自分の動き方が悪いから、と一人で抱え込む前に、職場に求められている水準を知っておくと、相談の土台になります。介護・看護作業の項目から、病棟の場面に近いものを抜き出します。
- 人の抱上げ:全介助が必要な人には、リフト等を積極的に使い、人力による抱上げは原則させない
- 用具の選び方:座位が保てる人にはスライディングボード等、立位が保てる人にはスタンディングマシーン等の使用も検討する
- 不自然な姿勢:前屈やひねりの姿勢をとらせないよう、ベッドの高さ調節、位置や向きの変更、作業空間の確保、スライディングシート等を活用する
- ベッドサイドの作業:立って前屈にならない高さまで電動で上がるベッドを使い、各自が作業の高さを調整する
- 休憩:全員が一斉に取るのは難しいので、交代で取れるよう配慮する
- 健康管理:腰に著しい負担のかかる作業に常時従事する労働者には、配置のときと、その後6か月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行う
これらは職場に求められている水準なので、実際の病棟とは差があることもあります。差があるとき、我慢で埋めようとするより、どの項目が足りないかを見える形にするほうが、職場には伝わりやすくなります。
点検リスト。自分の病棟は、どこまで整っているか
指針の項目を、病棟で確かめられる形にしました(最後の1行だけは指針の項目ではなく、職場の連絡の取り決めの確認です)。確かめる相手は、師長、安全衛生の担当、産業医などです。伝え方の文例は、あとの節に置いています。
指針は、事業者が、腰痛の発生に関わる要因を把握し、リスクを評価し、回避・低減の措置を検討して実施する、という進め方を示しています。伝えるときは「痛い」だけでなく、どの場面で、どんな姿勢で、どの用具がなかったかまで添えると、要因の把握につながります。点検した結果は、現在地ログなどに日付つきで残しておくと、あとで話しやすくなります。
使い方の目安です。各行に「ある」「ときどき」「ない」の三つで印をつけ、「ない」の行だけを取り出します。全部を一度に求めるより、移乗の用具か、ベッドの高さか、どちらか一つに絞って伝えるほうが、職場も動きやすくなります。同じ病棟の人と一緒に印をつけると、一人の感じ方ではなく、病棟の状態として伝えられます。印は、季節や人員が変わったときにもう一度つけ直すと、改善したかどうかも見えます。
点検は、全部できなくていいよ。気になる行に、印だけつけておこう。
痛みが出たあとの流れと、労災の考え方
痛みが続くときは、まず医療機関で診てもらうことが先です。診断や治療の中身は、この記事では扱いません。そのうえで、職場への連絡と記録、労災の確認という順に進みます。
- 診てもらうまず医療機関で
- 職場に伝える師長・産業医など
- 記録を残す日時・場面・姿勢
- 労災を確かめる労働基準監督署へ
- 続け方を決める急がずに
順番に、ひとつずつでいいんだよ。
労災は、要点だけ押さえておきます。厚生労働省の認定基準は、腰痛を、仕事中の突発的な出来事による「災害性の原因による腰痛」と、腰に過度の負担がかかる仕事を続けて発症した「災害性の原因によらない腰痛」に分けています。いわゆるぎっくり腰は、仕事中の発症でもただちに対象とはならないとされますが、発症時の動作や姿勢の異常性などから腰へ強い力が働いた場合は、認められることがあります。当てはまるかは労働基準監督署が個別に判断し、事業主の証明が得られなくても請求はできます。請求の手順や期限は、労災の対象と申請の流れにまとめています。電話での相談は、労災保険相談ダイヤル(0570-006031、平日8:30〜17:15、祝日・年末年始を除く、通話料あり)が使えます。
どの場合も、いつ、どんな動作のときに痛みが出たかを書き残しておくと、受診のときにも、労災を相談するときにも説明しやすくなります。たとえば「14時、全介助の方の移乗。ベッドの高さを上げずに二人で抱え上げた」のように、時刻・作業・姿勢・用具の有無を一行にまとめます。翌日以降の痛みの変化も、同じ形で書き足します。
記録は短くていいよ。時刻と動作だけでも、残しておこうね。
続けるのがつらいときの選択肢
腰の痛みが続くと、異動、働き方の変更、退職といった考えが浮かびます。決めるのを急がず、次の順に見ていくと、選択肢が整理できます。
- 1. 医師の意見:就業上の配慮が必要かを、診てもらっている医師に聞く(産業医がいる職場では、産業医にも)
- 2. 職場の中で変えられること:用具、作業の方法、担当、時間の組み方、部署
- 3. 職場の外で変えること:勤務先、働き方、通院しながら働く形
指針は、腰痛の健康診断の結果をもとに、医師の意見を聴き、必要があるときは、作業方法等の改善、作業時間の短縮等、就労上必要な措置を事業者が講じることとしています。作業のやり方や時間を見直す役割は、職場の側にもあります。
職場の中で変える
担当、用具、作業の方法、時間の組み方を相談します。部署の異動も一つの形です。伝え方は師長への相談の仕方にあります。
異動や転職で腰への負担が軽くなるかは、部署や施設ごとの作業の中身で変わります。上の点検リストの項目が、そのまま、異動先の見学や面接で聞く質問になります。
- 移乗や体位変換の介助は、一日にどのくらいあるか
- リフトやスライディングシートは、すぐ使える場所にあるか。使い方を教わる機会はあるか
- ベッドは電動で、高さを変えられるか
- 休憩は交代で取れているか。座って休める場所はあるか
- 夜間の体位変換は、何人で行っているか
答えを聞くだけでなく、見学のときに、廊下や病室に用具が置いてあるか、実際に使われている様子があるかも見ます。「あります」という答えと、すぐ手に取れる場所にあることは別だからです。
腰の痛みで受診しています。移乗の場面で、リフトやスライディングシートを使える形にできないか、相談させてください。
師長に伝えるときの例
辞めるかどうかは、痛みの強さだけでなく、休めているか、続けたい部分が残っているかとも関わります。整理の入り口は、「辞めたい」を、3つに分けて考えるにあります。夜勤明けの体の整え方は夜勤とからだの記事、次に読むなら手荒れ・肌荒れの記事につながります。
見学のときは、点検リストをそのまま質問に使ってね。
よくある質問
看護師の腰痛は、労災になりますか?
厚生労働省の認定基準は、腰痛を、突発的な出来事によるものと、腰に過度の負担がかかる仕事を続けたことによるものに分け、医師により療養の必要があると認められたものを対象にしています。個別に当てはまるかは労働基準監督署が判断するため、最寄りの労働基準監督署か、労災保険相談ダイヤルで確かめてください。
腰痛ベルトは、使ったほうがよいですか?
使うかどうか、どう選ぶかは、痛みの状態によって違う医療上の判断なので、診てもらっている医師に聞いてください。受診のときは、どの作業で痛むかの記録を見せると、話が具体的になります。ベルトとは別に、職場に求められている対策(用具の使用、ベッドの高さ、交代の休憩)が整っているかは、点検リストで確かめられます。
腰痛を理由に、異動を頼むことはできますか?
頼むこと自体はできます。まず医師に就業上の配慮の必要を聞き、そのうえで師長に、痛みが出る場面と、どんな配慮があれば続けられそうかを伝えます。異動できるかは職場によって違うため、就業規則や人事の窓口で確かめてください。
出典・参考(公的な情報)
- 職場における腰痛予防対策指針及び解説(厚生労働省)
- 腰痛の労災認定について(リーフレット、令和7年3月)(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 労災保険給付の概要(リーフレット)(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
- 療養補償等給付の請求手続(パンフレット)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。