病院以外の仕事
看護師の起業・開業の始め方。訪問看護ステーションの要件と窓口
更新 2026年10月23日読むのに約8分
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看護師が起業・開業を考えるとき、最初に決めるのは、どの法律の枠で何をするかです。看護師が管理者として開ける代表的な入口である訪問看護ステーションの要件と申請の流れを中心に、診療所・助産所・自費サービスとの違い、収入の試算までを整理します。
いつか自分の力で、って考えたことは、あるかな。
起業の入口は、3つの枠のどれに入るかで分かれる
「看護師の起業」は、中身で大きく3つに分かれます。介護保険法の指定を受けて訪問看護ステーションを営む道、医療法の施設(診療所・助産所)を開く道、そして医療保険・介護保険を使わない自費のサービスを始める道です。どの枠かで、窓口も、満たす条件も変わります。
どの枠でも変わらない前提があります。保健師助産師看護師法37条は、主治の医師の指示があった場合を除き、診療機械の使用や医薬品の授与など、医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない、と定めています。看護師免許で開業しても、医師の指示なしに診療の補助を行う事業はできません。この線は、自費のサービスでも同じです。
| 入口 | 根拠 | 看護師が管理者になれるか | 開く前に必要なこと |
|---|---|---|---|
| 訪問看護ステーション | 介護保険法70条、基準60〜62条 | なれる(保健師か看護師が原則) | 法人を作り、都道府県知事などの指定を受ける |
| 診療所 | 医療法7条・10条 | なれない(医師が管理) | 医師以外が開設するときは都道府県知事などの許可 |
| 助産所 | 医療法7条・8条・11条 | なれない(助産師が管理) | 助産師が開設するときは10日以内に届出 |
| 自費のサービス | 保険の指定を受けない | 事業による | 医師の指示が要る行為をしない設計 |
2026年10月時点の条文で確認した範囲です。細かい要件は、開業する地域の窓口で確かめてください。
看護師が管理者として開ける保険の入口は、いちばん上の行だよ。
診療所は、医療法10条により、医師(歯科診療所は歯科医師)に管理させなければなりません。医師でない人が開設すること自体は、7条1項の許可を受ければ条文の上でありえますが、管理は医師です。助産所は、11条で助産師に管理させるものとされています。助産師が自ら開設するときは、開設後10日以内に都道府県知事への届出(8条)、助産師でない人が開設するときは許可(7条1項)が要ります。看護師免許で管理者になれる保険の入口は、訪問看護ステーションです。
訪問看護ステーションを開くための5つの条件
訪問看護ステーションは、介護保険法70条により、事業所ごとに、申請に基づいて都道府県知事などが指定します。指定を受けるための主な条件を、条文に沿って並べます。
- 法人であること:70条2項1号は、申請者が都道府県の条例で定める者でないときは指定しない、とし、その条例の基準は介護保険法施行規則126条の4の2で「法人であること」とされている。個人事業のままでは申請できないので、株式会社・合同会社・一般社団法人・NPO法人などを先に作る
- 看護職員が常勤換算2.5以上:保健師・看護師・准看護師を常勤換算で2.5以上置き、うち1名は常勤(指定居宅サービス等の基準60条)。看護師1人では開けない
- 管理者は保健師か看護師:専ら職務に従事する常勤の人で、原則として保健師か看護師(同61条)。管理上支障がなければ、同じステーションの他の職務も兼ねられるので、開業する看護師が管理と訪問の両方を担う形もありうる
- 専用の事務室:事業の運営に必要な広さの専用の事務室と、訪問看護に必要な設備・備品を備える(同62条)。同じ敷地に他の事業所があれば、専用の区画でもよい
- 6年ごとの更新:指定は6年ごとに更新を受けないと効力を失う(介護保険法70条の2)
厚生労働省の資料によると、介護保険の指定訪問看護事業所の指定を受けると、医療保険でも指定を受けたものとみなされます。つまり、介護保険の指定を取れば、医療保険の利用者さんにも訪問できる形になります。事業所の数は、2024年10月1日現在で18,042か所、前年の16,423か所から増えています(介護サービス施設・事業所調査)。増えているのは事実ですが、地域ごとの競合の強さは、この数字からは分かりません。
法人、2.5人、管理者、事務室、更新。5つを紙に書いて、ひとつずつ埋めていこう。
申請までの流れと、相談する窓口
申請の手続きや書式は、指定を行う都道府県・市によって違います。一般的な流れを、順番に並べます。
- 事業の計画地域・利用者・収支
- 法人を作る定款に事業を書く
- 人と場所を確保看護職員2.5人・事務室
- 窓口に事前相談都道府県・市の介護保険の担当
- 申請・指定指定日から事業開始
申請の前に、窓口へ相談する順番が近道だよ。
窓口は、事業所を置く地域で指定を行う自治体の、介護保険の担当課です。申請の前に事前相談を求める自治体や、受付の締め切りと指定日を月ごとに決めている自治体があるので、まず手引きを取り寄せます。法人を作る前に一度相談しておくと、定款の事業目的の書き方や、事務室の要件で手戻りが減ります。人を雇うなら、労働保険と社会保険の手続きも同時に進みます。
自費のサービス(通院や外出の付き添い、家族向けの健康相談など)は、保険の指定が要らない分、始めやすく見えます。ただ、医師の指示が要る行為は行えず、料金も全額が利用者さんの負担になります。保険の訪問看護と組み合わせる事業者もいるので、どこまでを自費にするかは、事業の計画の段階で決めておきます。
収入と時間の試算を、制度の確認と並べて作る
制度の入口が見えたら、収入と時間の試算です。開業の費用に、公的に決まった額はありません。必要なものを書き出し、見積もりを取って積み上げます。
- 開業の費用:法人の設立、事務室の賃料と敷金、車や自転車、パソコンと記録のシステム、備品
- 毎月の固定費:人件費(常勤換算2.5人分以上)、家賃、車両費、通信費、保険料
- 毎月の収入:訪問の件数 × 報酬の単価。介護保険の訪問看護費は、ステーションの30分以上1時間未満で823単位など(令和8年6月改定時点)。1単位あたりの金額は、地域の区分で違う
- 収入が立ち上がるまでの期間:報酬が入金されるまでの間の人件費と生活費を、どこから出すか
式にすると、「毎月の収入 − 固定費 − 自分の生活費」が、毎月の余りです。開業の最初は利用者さんが少なく、余りがマイナスの月が続くこともあります。その期間を何か月持たせられるかを、収入を低めに見積もった場合でも計算しておきます。生活費の数え方は、看護師の貯金の必要額を出す手順にあります。
個人で看護の仕事を請け負う形は、フリーランスの看護師の働き方で扱っています。いきなり開業せず、訪問看護ステーションで働いて運営の様子を見る道もあり、仕事の流れは訪問看護の働き方が参考になります。病院以外の働き方を広く比べたいときは病院以外で働く看護師の選択肢も使えます。
確かめる順番ができたね。窓口に聞くところから、始められるよ。
よくある質問
看護師が、自分の診療所を開くことはできますか?
医療法10条により、診療所の管理は医師が行います。看護師が管理者として診療所を開く形はありません。看護師が管理者になれる保険の入口は、訪問看護ステーションです。
訪問看護ステーションは、看護師1人や個人事業でも始められますか?
始められません。基準60条は看護職員を常勤換算で2.5以上(うち1名は常勤)と定め、介護保険法施行規則126条の4の2は申請者が法人であることを求めています。法人を作り、看護職員をそろえてから申請します。
開業にかかる費用は、どのくらいですか?
公的に決まった額はありません。法人の設立、事務室、車両、記録のシステムなどの開業の費用に加えて、利用者さんが増えるまでの数か月分の人件費と家賃を用意しておく考え方が基本です。見積もりを積み上げて、窓口や専門家に確かめます。
出典・参考(公的な情報)
- 介護保険法 第8条・第70条・第70条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 介護保険法施行規則 第126条の4の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第60条・第61条・第62条・第93条・第175条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 医療法 第1条の5・第7条・第8条・第10条・第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 保健師助産師看護師法 第5条・第37条・第42条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 訪問看護 参考資料(令和5年5月18日 意見交換 資料2参考)(厚生労働省)
- 令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)
- 介護報酬の算定構造(令和8年6月改定箇所)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。